いつ終わるかわからない作業:訳文の再点検(8)
キップスの邦訳につき、ペンギン・クラシクスの注部分をチェックする作業の続き。
注26のある文(distrait)
全段落を引用する。
"I give her a lot of start," said Kipps apologetically. "It wasn't a proper race." And so the subject was dismissed. But Kipps was distrait for some seconds, perhaps, and the mischief had begun in him.
「すごくハンデをつけたんだ」と、キップスは謝るように釈明する。「まともな競争じゃあない」と言って、それでその件は不問に付された。しかし、キップスは何秒だかぼうっとしていた。それでも彼の腕白はもう始まっていた。
注は外来語distraitの訳語を記述。そんな珍しい単語だったのかしら。原文は斜体で外国語であることを示唆している。ちょっと手元の辞書を調べると、大昔の辞書(COD第六版)*1ではなるほど仏語読みの発音で載っているけれど三十年くらい前の学習英語辞典(OALD第四版)を見ると英語読みで普通の英単語にしか見えない。
注27のある文(ironclads)
They fell to talking of wrecks, and so came to ironclads and wars and suchlike manly matters.
難破船のことで話し込み、やがて装甲艦、そして戦争とか、男らしいことが話題になった。
第四節にはいった。注はironcladsとは何か記述。
注28のある文(quid)
Presently he fell to spitting jerkily between his teeth, as he had read was the way with such ripe manhood as chews its quid.
やがて歯の間からぎこちなく唾を吐く動作をしだした。成熟した男がタバコを噛むときにはそうするものだと読んだことのある、その仕草だ。
注は噛みタバコquidの辞書的定義。