アーも彼女に
これは最近の発見であるが、出発点は、すごく小さくつまらない。
ア
たぶん先々週あたりだが書店で英語辞書を見ていてherの発音に気音hのないもの(敢えてカタカナ表記すればアとかアー)も挙げている辞書があることに初めて気づいた。そんなものが出現したのはきっと最近のことだろうと思う。自分の持っている(主に前世紀の)辞書に該当するものはない。
英和辞典では実地で調べていないが、そういうものは(まだ)少ないのではないかと思われる。インターネット上の辞書を見ると弱い音のとき無気音の発音が挙げられているものはある。
ejje.weblio.jpオックスフォード学習辞書のページにはどーんと強形(アー)まで出ていて、いまや事実認識にも記憶にも自信のない私にとって、自分が書店で見たものが白昼夢でなかった証拠のように思える。ありがたくリンクさせていただく。
www.oxfordlearnersdictionaries.comアメリカ式発音アーブ
こちらはちょっとは役に立つかもしれない。辞書を開いたついでにherの続きかそのあたりにherb(ハーブ)が出てくる。米国音では気音なしの発音になっているだろう。
覚えるのに便利だから通説をメモしておく。
もともとはフランスからの外来語であるために原音に習い、hは省いて発音する。しっぽのbはだいじょうブか、って思うけどフランス語綴りはherbeだからエルブで心配ない。
正確には英語の場合、当初は綴りからしてhを省いていたそうだ(erbe)。15世紀に綴りにhを復活させたが、19世紀まで発音されなかった。それが大西洋両岸の違い、ということらしい。しっぽのeはどうしたのかな?
ヘイチ
hが綴りに戻ると発音されるようになる、という復元力があるのか疑問だ。
ちょっと強引だが、Hはなぜヘイチでなくエイチ(aitch)なのか、という疑問とも関係する。
なにかもうほかの記事で書いた気もあるが、実際Hをヘイチと発音する人も存在する。これは私も聞いたことがある。Bang Goes the Theoryという、BBC(英国放送協会)の科学番組で、複数回、はっきりそう聞いた。
しかし私の場合そう発音する人はその特定の一人しか知らず、一時期不思議に思っていた。その人は無教養な人ではなく例外のようだが、一般には、Hをヘイチと発音する人というのは労働階級の、標準語を知らない者が正しい発音を意図して、自分が普段省いてしまっているhの音を復活させて発音してみせるうちに生じる行き過ぎ(hのないものまで気音を入れてしまう過修正)、と説明されるようだ。これは英国人がどこか(日本国内の本)で書いていたことに基づいているのだが(本屋禁断の立ち読みから頭にはいった情報で)、白日夢ではないと思うが、いまや原典も著者もはっきりしない。
ところが、Google一投、BBC発音部なる組織のジョ・キムという人の記事を見ると事情がやや違うようだ。原文を読んでいただくべきだが、何と
www.bbc.comヘイチという発音はアイルランド英語では正統の発音なのだ*1。しかもそれがイギリス人にも広がっており若い人に著しい*2。親がこどもにh音を省くなと口煩く言うせい、というのもあるらしい。そもそもヘイチという読み方もイギリスでも(variantとして)一応の地位を得ていて、BBCの番組アナウンサー(broadcaster)にヘイチと言う人がいても直させることはないそうだ。ただその人から助言を求められればエイチのほうが標準です、とは教えるとか。
先のBBC記事のヘイチという異称についての情報は概ね、現状、英語ウィキペディアのHの項に掲載されているもので、そこではロングマン発音辞典を引用してヘイチと言う人の割り合いを1982年以後出生の英国人の約24パーセントとしている。
en.wikipedia.orgGoogleしていると日本語記事でもヘイチが話題になっていて、エイチとどちらがよいか正しいか、の類の問いや意見、助言が見られる。偏見を隠さず言えば、現状ではわざわざ異称ヘイチに切り換えようかと考える人の気が知れない。私の場合は死ぬまで学校で習った発音のままになるであろう。
さらにGoogleすると、おっとこれは10年前の話題でした。確かに。こちらを読んだ方、書いた方には私のは半ば無用記事となります。失礼。