ある日本人の英語

H. G. Wellsの小説「Kipps: The Story of a Simple Soul」の翻訳出版に向けた作業ブログ a one-man effort to translate a novel by H. G. Wells, “Kipps: The Story of a Simple Soul” (1905) into Japanese and publish the results

2019-01-01から1年間の記事一覧

雑談:ラテン語つまみ食い

おとつい、洋書売場を覗いてきた。 Wheelock's Latin ラテン語の教科書だ。Wheelockの本は姉妹編かいろいろありそうで、見たのがこれでない可能性もあるが、題名はたぶんこれで良い。 昔からよく見かけながらも、でっかい本、くらいにしか思っていなかった。…

雑談:洋書売場より

昨日、洋書売場を覗いてきた。 大異変—危機に立つ国家の分岐点 Upheaval: Turning Points for Nations in Crisisという本をぱらぱら見た。どうしてそれを手に取って見ようとしたのか確かではないが、表紙の絵がいかにも日本を大きく取り上げてそうな、荒波に…

コンラッドの「闇の奥」英語読解メモ(第一部)

ジョゼフ・コンラッドの小説「Heart of Darkness」第一部から、気になることをここに書きつけていく。ページ番号は手元の[ペンギン本]のもの。 Heart of Darkness Part 1読解メモ Page 3, swung to her anchor Page 10, It was only months and months aft…

コンラッドの「闇の奥」から再び

またジョゼフ・コンラッドの小説「Heart of Darkness」の文を借りて観察し、てきとうに解釈する。 ようこそ So it begins 英文解釈の題材としてみたとき、「闇の奥」の原文は出だしから勉強させてくれる。ここで取り上げる第一章第一段落では、物語の披露さ…

コンラッドの「闇の奥」から

このブログ開始時の目的から離れて、Kippsやその邦訳出版と深く関係しないことも話題にしてみる。 闇の奥 ジョゼフ・コンラッドの小説「Heart of Darkness」(1899年)には、これまで少なくとも4名の翻訳者の手により4種もしくは5種の邦訳がなされている*1。…

雑談:メンテナンス

ウェルズのKippsを翻訳出版してみる、という当初の目的はもう達成されているように思う。しかし一方で、ときどきパラパラ読み返し、直したいところを見つけることもある。実際、電子出版のほうは、何度か若干の改良を加えている。 些細な誤字脱字、あやしい…

そんな目に合わなくてI don't envy you

これは問題にすべきか迷う。記録するには値するかも。忙しい方は読まないでくだされ。 キップス中巻四章二節 「もちろん、そういうことは、友よ、おまえに起きるほうが、おれに起きるよりは良いだろう。だから、うらやむことはありえない。おれだったら、た…

交える「ことば」exchanging words

これは修正候補。どうすればよいかはまだ考え中。 キップス上巻二章五節 △あとで両婦人は日曜日のことのために「ことば」を交わした。 原文は Afterwards the ladies exchanged ‘words’, upon Sabbatical grounds. exchange wordsは口喧嘩するというような意…

雑談:マーガリン

キップス(Kipps)にもマーガリンが出てくる。この文は上巻二章二節の二段落あたり、POD出版(予定)の日本語版なら(対応するものが)33ページにある。 What he put into Kipps was chiefly bread and margarine, infusions of chicory and tea-dust, colon…

近況:POD出版

紙の本の出版準備はまあできた。 目的の形式はPDFだが、なまけてMicrosoft Wordで始めた。どうしても300ページほどにはなってしまう分量だが、それ自体、なんでもないことだった。ラップトップ上での作業だが、編集中の反応が待たされることも、少なくとも印…

近況:電子出版

この記事は、近況メモで、いつも以上に、さしたる構想もないのでだらだら書かせていただく。 しょっちゅう、ちょこちょこ直したり描きたしたりしているけれど、このところ形式的には、表紙の絵もあるし、EPUBの形式にはなっていて漸近的に完成に向かっている…

メモ:鈍き矢blunted dart

これはKipps: The Story of a Simple Soul中巻二章五節に見える「blunted darts」についてのメモ。 Wikisourceから原文を引用すると Kipps/Book 1/Chapter 2 - Wikisource, the free online library In this way was the toga virilis bestowed on Kipps, an…

進捗:EPUB作成

先日、もくろみより一ヶ月ほど遅れ、翻訳のチェックは一通り終わった。電子出版の形式に移行するための準備を進めている。第一段階として(本当に必要なのかしらないが取り敢えず)EPUB形式にする。 翻訳は一節か二節単位のプレーンテキストとして保存してい…

翻訳チェック:反語

Kipps: The Story of a Simple Soul下巻一章三節の「much he cares」は「気にしない」という意味らしい。 Kipps/Book 3/Chapter 1 - Wikisource, the free online library You beg him to reduce rents, whitewash ceilings, produce other houses, combine …

翻訳チェック:白と黄

Kipps: The Story of a Simple Soul中巻七章四節、社会主義者のことばにある「white world」と「yellow」の処理が心もとない。 "But meanwhile we're going to have a pretty acute attack of confusion. Universal confusion. Like one of those crushes wh…

翻訳チェック:五十歩百歩

Kipps: The Story of a Simple Soul中巻七章四節に「there's not a pin to choose between them」という表現が出てくる。 Kipps/Book 2/Chapter 7 - Wikisource, the free online library Your cads in a bank holiday train and your cads on a two thousan…

翻訳チェック:関係代名詞の有無

Kipps: The Story of a Simple Soul中巻七章四節のこの文はWikisourceの場合、関係代名詞thatを含んでいる。 Kipps/Book 2/Chapter 7 - Wikisource, the free online library As for happiness, you want a world in order before money or property, or any…

翻訳チェック:デッド特価品

Kipps: The Story of a Simple Soul中巻七章一節に見える「dead bargains」とは何だろう。 Kipps/Book 2/Chapter 7 - Wikisource, the free online library He hesitated at Farringdon Street and drifted up to St. Paul's and round the church yard, ful…

翻訳チェック:形式的には肯定文なのに否定表現

文脈から言っていそうな意味が想像できても、そういう意味になるとは理解できないことがある。つまりはてんでわかっていないのであって、文脈によって、己の未熟さに運良く気付くということなのだ。 Kipps/Book 2/Chapter 6 - Wikisource, the free online l…

翻訳チェック:狩猟かクリアランスか

Kipps: The Story of a Simple Soulの翻訳に迷う箇所をまた一つ。「shooting」をどう解釈するかなのだが、中巻四章一節から、小さな店を畳んで引っ越せるかについての店主の発言。 Kipps/Book 2/Chapter 4 - Wikisource, the free online library "When we d…

発音を読む

Kipps: The Story of a Simple Soulから、主に会話部分のちょっと読み難いつづりを少し列挙して記録する。 arst bref curr, currr doocid 'eng Foozle Ile Ithe, 'Ythe juice lardy da laylock Oireland oo p'raps、p'r'aps pute roosh tegs ter toce 'ussel…

原文の選択:誤植か否か、修正するか否か

MertonはMintonの誤記 底本のテキストには(その本に限らず)、あまり悩まず、誤記とみなせるものもある。たとえば、上巻五章三節の終わりの方に、そこ一回しか出てこない「Merton」という人名が出てくるが、文脈から、もっと前に複数回出てくる「Minton」の…

この植物はどれ?:snow-upon-the-mountain

Kipps: The Story of a Simple Soulに出てくる、ある植物の和名を同定する。具体的に、中巻二章四節(ウィキソースでは、Kipps/Book 2/Chapter 2 - Wikisource, the free online library)のこの下線部。 But the early June flowers, the big narcissus, sn…

翻訳チェック:たばこでたばこに火をつける

ある人は、Kipps: The Story of a Simple Soul 中巻一章一節のつぎの下りで前置詞「from」を十分訳せなかったようだ。 Kipps/Book 2/Chapter 1 - Wikisource, the free online library Then Coote said something about "Abend," which Kipps judged to be i…

翻訳チェック:it is/wasそれは強調

日本語でも、「それはそれはおいしいみかんでした」と言えば、どういうわけか、「おいしい」が強調されるが、Kipps: The Story of a Simple Soulにおいても、「it is」や「it was」を強調したい語の直前に挿入するだけ、という便利な強調構文が多用される。 …

ゲルマン風の数え方

Kipps: The Story of a Simple Soulには「one and twenty」(二十一)のような数字の言い方が出てくる。 Kipps/Book 1/Chapter 6 - Wikisource, the free online library "How old are you, Kipps?" "One and twenty," said Kipps. "Why?" 「キップス、君は…

そうでしたか:あのことばのこんな意味

よく知られたことばのちょっと意外な意味での用例をKipps: The Story of a Simple Soulから少し、拾ってみよう。昔の言い方やスラングも含む。ほぼ全部、自分の作文で使うことはないと思う。 air budget cut out directly have leading office own rap rathe…

つじつまの合わぬこと

文通しても手紙を書いたことにならない? 話しているのは私、割ったのは君 シドの妻のなまえ おじさんのなまえ 文通しても手紙を書いたことにならない? 上巻五章三節に、就職活動に関して「キップスは手紙を書いたことがない」旨の記述がある。 Kipps/Book …

翻訳チェック:directlyという接続詞

directlyには、副詞で「じきに」のような意味もあるが、接続詞のときもある。そのときにはas soon asに近い働きになる。 Kipps/Book 1/Chapter 5 - Wikisource, the free online library When he was under inspection he affected the slouch of a desperad…

翻訳チェック:先行詞はどれ

その昔ある人が、おそらく英語で論文を書いていたころ、勉強のために通読した本に*1改良すべき文の例として次のようなものがあった。 She paid five dollars for a dress at the county fair that she despised. その本にどういう解説がなされているかは、さ…