いつ終わるかわからない作業:訳文の再点検(42)
「キップス」の邦訳につき、ペンギン・クラシクスの注部分をチェックする作業の続き。
- 中巻4章注4のある文(hipped)
- 中巻4章注5のある文(swell)
- 中巻4章注6のある文(Owenite profit-sharing factory)
- 中巻4章注7のある文(spectacles)
- 中巻4章注8のある文(Sammy)
- 中巻4章注9のある文(doocid)
中巻4章注4のある文(hipped)
"'Ow's that?" said Kipps, a little hipped by Sid's patent chagrin.
「それはなぜだい」と、キップスは、シドの明らかに悔しがっているようすに、気を落として尋ねた。
注はhippedが立場が不利という意味だという。採用し難い。
拙訳はmade low-spiritedの意味で解釈。https://en.wiktionary.org/wiki/hipped#Adjective_3
中巻4章注5のある文(swell)
He laid both hands on the gate and repeated to himself, "Twelve 'undred a year.... Gee-Whizz, Kipps! You'll be a swell!"
シドは、両手をゲートにやって、繰り返しつぶやく。「年千二百ポンド・・・いやはや、キップス。おまえはきっと、大物になるな」
注はswellが裕福な人、特にfashionableな服装の人という。そちらの意味だと「大物」とはかなり違う。おそらく今世紀の日本語俗語でいう「セレブ」に近い。ただし、これを翻訳に使うのは憚られる。
中巻4章注6のある文(Owenite profit-sharing factory)
その前から引用する。
Suppose it came to me, what should I do? It's no good giving it back to the state as things are. Start an Owenite profit-sharing factory perhaps.
おれだったとしたら、どうするだろうか。国に返したところで現状ではだめだ。オウエン主義の、利益共有する工場を設立するかもな。
注は人名の説明。
中巻4章注7のある文(spectacles)
第3節にはいった。
Sid assisted with the great furlined overcoat and examined the spectacles.
シドは毛皮が裏地の重い外套を持って手伝い、眼鏡を点検した。
注はspectaclesをgogglesと言い換える。では拙訳もすなおに「ゴーグル」とする?(なぜそうしなかったのか思い出せない)
中巻4章注8のある文(Sammy)
Old Kipps was radiant with triumph. "'Pon my Sammy, Artie!
老キップスは勝ち誇るようにごきげんだ。「ああ本当に、アーティ。
注はSammyの説明なのだが、結局おじさんの発言の意味はUpon my soul, Artieとしても同じということになろう。
中巻4章注9のある文(doocid)
"I'll make a doocid sight better than that before I done," said Sid, hands deep in his pockets.
「自分なら完成する前から、あーんなものより、ものすごく良いものになりますよ」と、シドは、手をポケットに深く入れ、言った。
注はdoocidをdeucedと読み替えて辞書的定義。
ここではdamnに交換してもよい。a damn sight - Wiktionary