（メモ）お魚をきれいにするということ（clean）
ベリャーエフ「難破船の島」第二部第二章の始めのほうにこんな文がある。
Она вычистила и зажарила пойманную Гатлингом рыбу, спустилась в трюм и взяла в складах провизии несколько апельсинов.
英語に書き下すとおよそこんな感じになろうか。
She cleaned*1 and fried a fish which had been caught by Gatling, and went down into the hold to get some oranges from the provision store.
魚をきれいにする（clean）というのは、どういうことか。
グーグルすれば辞書サイト、動画サイトなどにより、日本語の（魚を）「捌く」は英語ではおよそcleanで表現できるらしいことが確信できる。
旧式に紙の出版物で確かめることもある程度できる。cleaned and fried a fishの相当箇所は手許の仏訳（Victoriya et Patrice Lajoye）ではvida et fit frire un poissonとあり、手許の仏和辞書*2によればviderは魚、鳥などの「はらわたを抜く」こととある。この意味は仏仏辞書でも確認できる。そして手許の仏英辞書*3によればviderは鶏等に関し語義は英語でcleanとある。
手許の露英辞書*4のみではвычистить（不完了体чистить）にそういう意味があることは確認できなかった*5。日本語「捌く」のそういう意味を手許の辞書で確認することもできなかった。国語辞典にはそういう意味のはっきりした記載はないし、和英辞書にも相当の記載はなかった。「捌く」は処理する、うまく扱う、程度の意味しか確認できないのである。
英語辞書のほうも、cleanに問題の意味を記載しているものは（引き続き、手許の辞書では）Longmanのもののみであった。二冊あるうちの古いほう*6では魚についてそういう意味があるのかはっきりしない。新しいほうでは、相変わらず語義は「動物や鳥のはらわたを除くこと」としつつも、ずばりお魚の例文がある。
Harry caught the fish and cleaned them himself.
clean | meaning of clean in Longman Dictionary of Contemporary English | LDOCE
tak-p-masen.hatenablog.com手持ちのOxfordの辞書（古いCODやOALD）には見つからなかったのだけれど、たぶん最近は違うのであろう。少なくともオンラインではOxfordの学習辞書に、鶏や魚を対象にそういう意味があることが語義に記載してあるうえにやはりお魚の例文があるから*7だ：
英語には果して最近になってからそういう意味がcleanに加わったものなのか否か、興味があるけれど、わからない。
*1:あるいはscaledかもしれない
*2:デイリーコンサイス仏和・和仏辞典初版第四刷2005
*3:Larousse Concise French-English/English Dictionary, 2011
*4:Collins Russian Concise Dictionary, Second Edition 2000
*5:ただし鱗を除く（scale）、という意味はある。小説中の意味はそっちか？
*6:Longman Dictionary of Contemporary English, Reprinted with corrections 1981, Reprinted 1982、黒のペーパーバック。例文はI have to clean the chicken before I can cook it.
