ある日本人の英語

H. G. Wellsの小説「Kipps: The Story of a Simple Soul」の翻訳出版に向けた作業ブログ a one-man effort to translate a novel by H. G. Wells, “Kipps: The Story of a Simple Soul” (1905) into Japanese and publish the results

翻訳チェック:it is/wasそれは強調

日本語でも、「それはそれはおいしいみかんでした」と言えば、どういうわけか、「おいしい」が強調されるが、Kipps: The Story of a Simple Soulにおいても、「it is」や「it was」を強調したい語の直前に挿入するだけ、という便利な強調構文が多用される。

Kipps/Book 1/Chapter 6 - Wikisource, the free online library

"It was 'is son was my father——"

(誤訳)「それは息子でそれは僕のおとうさんで─」

高等学校などの英語教育の教えるところによれば、これは(標準語ならば)、例えば

"It was his son who was my father——"

などと関係代名詞を挿入して言うべきところで、

"His son was my father——"

と同じような意味になり「his son」を強調している。引用文はおよそ、「その息子こそが僕のおとうさん」と言っているに違いない。いやいや、強調しているのは「his」のようだから、ちょっと違うかも。「僕のおとうさんは、その息子」くらいでいいか・・・

追加例

ここに関係代名詞の抜けているせいで読み難い箇所を追加記録しておく。

Kipps/Book 2/Chapter 5 - Wikisource, the free online library

Brudderkins had brought him home to tea several times, and it was he had first suggested Helen should try and write.

何度もブラダスキンズは家に招いては茶を共にした。ヘレンに何か書いてみたらどうかと提起したのはほかならぬレヴルなのだ。